紙幣に書かれている人物を知ろう!【樋口一葉】編

木の葉

明治期に短期間に名作を残した女流貧乏作家の代表

現在の東京都千代田区内幸町に生まれ明治期に活躍した女流作家の第一人者で、短命に24才で人生の幕を閉じるまで多くの名著を残しました。
代表作の「たけくらべ」や「にごりえ」」「十三夜」など彼女の作品は、森鴎外などを始め、当時の文壇から絶賛して迎え入れられています。
明治5年生まれで短命に24歳で生涯を閉じた彼女の人生は、順風満帆とはとても言えないものですが、貧困生活に苦しみながら、1年チョットの間に数多くの名作を残しました。

向学心が高く和歌にも熱心な少女時代

明治新政府の下級役人の父を持つ一葉は、お金に困るような環境にはなく、幼少時より優秀でしたが、11才になったときに母親の「女は学問より家事」との考えで、学校退学を余儀なくされました。

一方、父親は娘の文才を見抜き、学業の断念に心を痛める娘を見かね、和歌は花嫁修業の一つとでも言って母親を説得したのでしょうか、一葉に和歌の通信教育を受講させ、歌塾「萩の舎はぎのや」へも入門させています。
当時の樋口家はまだ経済的余裕があり一葉の強い向学心によりかろうじて、文学の道が繋がっていたと言えるでしょう。
ところが一葉が17才の頃父親の出資先企業、そして父親自身の事業が次々と失敗して、膨大な負債を残したまま、父親は他界してしまいます。

兄を亡くしていた為、一葉が家督を相続することになり母と妹を抱える樋口家3人の生活は、一転して貧困に転落します。
生活困窮が原因で許嫁だった男性にも婚約を破棄されてしまい一葉の心に癒えない傷を残しました。
明治期の文豪、夏目漱石の家との間に持ちあがった縁談も樋口家の多額の借金などの経済状況を理由に破談とされました。
そのときの樋口家は女3人で内職の針仕事や洗い物で日々の生活費を稼いで凌いでいる状態で、立ち行かなくなれば各方面からの借金でつないでいたようです。

お金を稼ぐため小説家を志す

一葉はいくら内職で頑張っても、全く火の車から抜け出せそうもない経済状況に困り果てていた折、同じ塾に通う田辺花圃が小説で多額の原稿料収入を得た事を知り、「小説でお金を稼ごう」と思い立ち、「家族を支えるために」という責任感から小説家になることを志します。
それでも貧しさからは簡単に抜け出すことは出来なかったのですが、文芸雑誌に「大つごもり」、「たけくらべ」、「うらむらさき」などの名作を次々に発表した1年余りは、のちに文学史では「奇跡の14ヶ月」と絶賛され特にこの間の作品は評価が高いです。

貧しさがテーマとなった数々の名作とペンネームの由来

代表作「にごりえ」に良くあらわされているように、社会の「底辺層」でも必死に生きる人々の姿を活き活きと描いた作品が多いです。
叙情性に優れ美しい純文学作家としてますますの活躍が期待されていた矢先、長年の過労が原因で、肺結核を患い24才で人生の幕を閉じました。

なお、一葉のペンネームは仏教の達磨大師が一枚の木の葉に乗り中国へ渡った伝説から、「私にもお足(金銭のこと)が無い」として付けたと言いますので、さすが文才を感じさせますね。